デジタル印刷を導入し、新たな市場創造の可能性を模索している中で、第二の挑戦としてネット印刷通販事業を同時に立ち上げていく。 「みんパケ」(現在はHappyPackagingにサイト統合)という、これまでになかったパッケージのネット印刷通販への挑戦は決して容易ではなかった。 その挑戦の裏側にあった、試行錯誤と突破の瞬間を振り返る。
K.T.(データ作成): この中でパッケージのネット印刷通販事業も立ち上がりました。非常に面白いチャレンジではあるものの、パッケージの印刷をネット通販で受注できるようにする最大の難関はデザインでした。 BtoBの取引では、デザインデータがあるのが前提でしたけど、BtoCになると『デザインをどう作ったらいいですか?』という問い合わせが増えるのではないかと想定して、 年賀状みたいにweb上のソフトでデザインが簡単にできるといいんじゃないかと考えたんですね。それでデザインテンプレートを作ろうという話になった。
Y.S.(デザイン): 欲しいと思われるだろう形、パターン、色の組み合わせなどを考えたら数千以上になって。加えてシステムへのアップロードが一括ではなく、一つ一つだったんですね。 サービスのローンチに間に合わせるために夏休み終わりの小学生が宿題をこなすように、ただひたすらテンプレートをアップロードしていました。 結果的にはテンプレートを使わず、クライアントが自分で作ったデザインをアップロードされることのほうが多かったのが悔しかったです(笑)。
K.T.(データ作成): そもそもわれわれにネット印刷通販の知識がなく、ましてやパッケージのネット印刷通販は、開発当時の2013年当時では誰もやったことがない領域なので、お手本にするものもなく、サイトの構築にも苦戦しました。
社長木戸: ある展示会でデビューさせようと、大急ぎでサイトを構築したわけですが、結果として顧客から発注をもらえるレベルのサイトにならず、永らくサイトからの売上をとれなかったんですね。 それでWebの専門家にサポートをお願いして再構築しようと。今のパートナーさんに出会ってサイトをリニューアルしてもらえて、細々ですが売り上げが入る流れが構築できるようになりました。
Y.S.(デザイン): 新しいものを作る発想、それぞれの専門家との知見の共有などはこれからのパッケージの印刷、デジタル化される世界での事業の在り方を考える上で大きな学びの機会になったのが収穫でした。
K.T.(データ作成): デジタル印刷では、印刷機に送るデータ作成に関して、面付けなどのいままでやっていなかった工程を社内で進めることになりました。やることが増えたことで知見が溜まったというか、やれる業務の幅は広がりました。
A.Y.(生産管理): 『みんパケ』には4つの形状パターンがあるのですが顧客からは「それ以外はできないのですか?」とか、枚数は500枚から5000枚まで500枚刻みで発注できるんですが「700枚の印刷は無理ですか?」 「1万枚は無理ですか?」とかの問い合わせがあって。その都度対応を考えていました。
K.T.(データ作成): 『みんパケ』でネット印刷通販事業に進出したことで、弊社では初めてB to Cに限りなく近いお客様に接触したのですが、B to Cの通販サイトとしては、サイト設計が不十分だったんですね。 まずは to Cの顧客に向けての受注方法を構築したり、カスタマーサポートセンター的なものを立ち上げて対応したり、納期が事前に分かりづらかったようで、ここを伝えられるようなオフラインの流れを構築したり、 顧客からの要望に寄り添って応えられるだけ応えてみようと努力しました。サイト上からの注文の流れがそのまま顧客の気になるポイントの遷移になるように、UIを変えながらサービスを進化させていきました。
社長木戸: それでも袋は形状が複雑で、イメージしていたものと同じデザインを完全にオンライン上で表現することにかなり苦労しました。そんなときに出会ったのが、HappyPackaging でした。 デザインを含む仕上がりイメージをオンライン上の3Dプレビュー機能で確認できるのでこれがブレイクスルーになるのではないかと。
取締役西出:
最初にデジタル印刷の発注をくれたのは、2013年、東京のとあるコーヒーショップでした。スペシャルティコーヒーの市場がちょうど大きくなり始めていて、そのタイミングと弊社のデジタル印刷が合致して、
その拡販の波にうまく乗っていったわけです。ロットが大きくない、でも高価な付加価値商品なのでパッケージもしっかりとしたものでないといけない。そこにマッチしたのですね。
次に先述のサプリメント事業。手で簡単に開封しやすい素材の開発ができたことで大きく拡販ができました。
社長木戸:
「デジタル印刷」「HappyPackaging」がない、グラビア印刷一本の時代のKIDO PACKAGINGは、セールスは基本飛び込み営業だったんですね。企業に飛び込んで、顧客と関係性を作って新規開拓する。
非常に確率が悪いので、飛び込みで新規が取れたら社内で話題になるくらいでした。それが「デジタル印刷」ができたことで、逆に顧客からの問い合わせがセールスの起点になる機会も増えた。
問い合わせレベルなら月に相当数入ってきます。
そして今までのプッシュ型セールスでは、相手にされなかった企業からの問い合わせが生まれるようになった。
ドラッグストアなどで商品を展開する、ある超大手製薬会社は、デジタル印刷リリース直後に知人をたどって営業しても見向きもしてもらえなかったのに、
その数年後に先方から「デジタル印刷について詳しく紹介して欲しい」と問い合わせが入った。昔は断られた顧客が、向こうから話を聞きに来るとは、と感慨深いものがありました。
A.Y.(生産管理): HappyPackagingは、月に2,3件は発注前提でお問い合わせが入ることも増えてきました。Webマーケティングによって営業の在り方自体も変わってきている実感があります。
社長木戸: 営業が自信を持てていることを感じます。今までは「何しに来た」くらいの状態をかいくぐりながら営業していたのが、今や大手企業にも、ものおじすることなくアプローチができる。 一人一人の大きな自信につながっていることを感じます。
K.T.(データ作成): 3つのサービスの間でシナジーが生まれていることも強みだと感じます。「HappyPackaging」で問い合わせが入っても、規模的に扱えない場合は「デジタル印刷」にパスを出す。 「グラビア印刷」ではロットが小さすぎて今までは諦めていた引き合いに対し「デジタル印刷」へ接続させることで商品を提供することができる。 限られたニーズを3サービスが取り合うのではなく、シナジーを作って取引の幅を大きくしている感じを受けます。
取締役西出: 売り上げ規模はまだ数億円ですが、初年度売上から比べるとすでに100倍以上になっています。この先大きく飛躍して第二の屋台骨になる期待感は大きくあります。 「自分で手を挙げる」メンバーの積極性にも変化が現れました。
T.Y.(製造): 失敗の連続、苦悩の連続のさなかのタイミングに、メンバーのK.O.は、実は自分で手を挙げてこのプロジェクトに参加したんです。
K.O.(製造):
デジタル印刷プロジェクトが立ち上がった際に 「自分もやりたい」 と立候補しました。 もともとグラビア印刷の生産担当でしたが、デジタル印刷の知識はゼロ。
10年グラビアをやっていて、それなりにやれることが多くなっていたのですが、それでも 「新しいことに挑戦したい」という思いでプロジェクトに参加しました。
人に言われてやるより、自分から手を挙げたほうがモチベーションアップにもつながるので、思い切りました。でも最初は「どうやって動かせばいいのか分からない」 という状態でしたので結構苦労しました。
実際に動かしてみて、課題を一つずつ分析し、改善策を考えながら取り組んでいきました。時間があれば機械のメンテナンスも行い、最終的にはメーカーの人よりもこの機械の操作に詳しくなっていました。
こういったチャレンジを支えてくれる環境があるのは非常にありがたいと思っています。
取締役井上:
ほかにも立候補で何人かプロジェクトに参加を希望する人がいて、それだけ前向きに取り組んでくれた人がいたからこそ、成功したんじゃないかなと思っています。
「デジタル印刷」「HappyPackaging」へのチャレンジによって、新たな市場価値を構築し、それが少し閉塞感を感じ始めた印刷業界全体とは違ったKIDO PACKAGINGの状態を作り上げていった。
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